新生獺祭とは、2020年2月に発売された新しいシリーズ。
「新生獺祭磨き二割三分」と「新生獺祭45」の2種類が発売されています。
この新生獺祭がおもしろいのは、いろいろな情報が非公開ということ。
製法、日本酒度、酸度などは、一切公開されていません。
公開されていること
- 原料米は山田錦であること
- 精米歩合は23%と45%
- アルコール度数は16%
分かっているのはこれだけです。
ただ、精米歩合が表示されているので、どちらも純米大吟醸であることは間違いありません。
情報が非公開の獺祭と言えば、「磨きその先へ」があります。
こちらは、精米歩合までも非公開。
純米大吟醸を名乗るためには、精米歩合が50%以下であることを表示しなければなりません。
なので、獺祭磨きその先へは普通酒の扱いになっています。
値段が高いこともありますが、情報が非公開なのも興味をそそられますよね。
同じように情報が秘された新生獺祭とは、いったいどんな味なんでしょうか。
通常の獺祭45と、新生獺祭45を飲み比べて、味や香りの違いなどを詳しくレビューします。
新生獺祭とは?|百薬の長へ戻る酒
2020年2月17日のメールマガジン蔵元日記によると、新生獺祭は、これまでとは違う古来の製法で作られた酒とのこと。
この「新生獺祭」はそんなところに着目して古来の酒に習おうとしたものです。しかし、そこは獺祭ですから、「ただ古来の造りに戻ればいい」とか「自然のままなら美味しくなくてもいい」とは思い ません。品質的には現代の優れた純米大吟醸が基準。しかし、古来の発酵の力は存分に盛り込みたい。
このメールマガジンの中で、発酵について触れていることから、麹造りから仕込みの段階のどこかで、古来の製法を取り入れたということなのでしょうか。
かつて酒は百薬の長であった
「酒は百薬の長」という言葉は、比喩ではなくて、実際に薬代わりになっていた時代もあったということ。
発酵技術が進化していない時代では、野生の酵母やその他の菌が繁殖してしまうこともあるでしょう。
それが偶然か必然か、薬のような効能が経験で見出されていたのかもしれません。
実際にアフリカで発見されたビールには、抗生物質が含まれていましたし、中国では生薬を入れて治療として酒を飲んでいました。
発酵技術の進化した現代では、衛生管理がしっかりしたおかげで品質が安定しました。
また、大型の工場で作ることで、低コスト化し、高いアルコール度数の酒を、気軽に購入できるようになりました。
その結果、酒は百薬の長とはかけ離れたものになっています。
飲み過ぎで健康被害の原因になってしまうことも…
そこで、百薬の長たる酒に戻ろうと、古来の手法で作ったのが新生獺祭というわけです。
古来の手法とは?謎は謎のままで
和漢三才図会は、江戸時代中期に編纂された百科事典のようなもので、その中に酒造りに関する項目があります。
酒の項目の上にあるイラストは、もろみから酒を絞りとる工程です。
現代とほぼ同じ技術だと思われます。
現代語訳を見ると、獺祭の三段仕込みと同じような製法です。
違うのは桶でしょうか。
直径2.5メートルほどの大きな桶は、室町時代に登場します。
江戸時代、明治、大正と、大きな木桶で酒を仕込むのが一般的でした。
しかしその後、昭和25年頃にはステンレスやホーローへ。
木製の桶を使う酒蔵は減少しました。
今獺祭を造っているのも、ステンレスでできた大型のタンクです。
新生獺祭はもしかして、木桶で仕込んでいるのでしょうか…
というのは、想像にすぎません。
古来の手法がとても気になりますが、謎は謎のままで、新生獺祭を楽しむことにします。
新生獺祭45と獺祭45の飲み比べレビュー
獺祭45、新生獺祭45の飲み頃温度は、どちらも冷蔵庫から出してすぐ。
4~5℃なら、すっきりとした飲みやすさを楽しめます。
この温度だと、ちょっと香りや甘さが控えめですが、だんだん温度が上がるうちに、華やかな香りと甘さが際立ってきます。
獺祭45|フルーティーな香りとまろやかなうま味がある
通常の獺祭45は、甘い香りの中に少しだけ酸味が混じります。
例えるなら早摘みのイチゴのような甘酸っぱい香り。
味は、ほんのり甘く、米のうま味や風味を感じられます。
新生獺祭45|フルーティーな香りはそのままキリっと芯がある
新生獺祭45も、通常の獺祭と同様フルーティで華やかな香りがします。
違いは、ほんの少し甘い香りが減って、爽やかさが増している感じ。
イチゴよりもリンゴに近い香りです。
飲んでみると、ほんのりと感じる甘さと米のうま味。
少しだけ辛口なんでしょうか。
濃度が濃くて、キリっとした芯の強さがあり、輪郭がよりはっきりとしている印象です。
日本酒度、酸度が非公開なので具体的な数値はわかりません。
日本酒度や酸度は、日本酒の味わいがわかる指標のことで、詳しくはこちらの記事で説明しています。
まとめ
古来の製法に戻して作ったという新生獺祭45。
味や香りにどんな違いがあるのか、通常の獺祭45と飲み比べてみました。
その結果、獺祭45は、まろやかさや柔らかさのある味わいなのに対し、新生獺祭45は、コクが増して強さや芯がある味でした。
どちらもフルーティーな香りはそのまま、すっきりと飲みやすいお酒。
輪郭がはっきりしている新生獺祭は、濃い味のお料理にもよく合いそうですね。
新生獺祭は受注生産です。
店舗で注文しても時間がかかるようなので、試してみたい方はお早めに購入することをおすすめします。